ボルボヒストリー エンジン開発は自動車メーカーの命綱

自動車の開発は、周りの会社の情勢や環境によって方針転換を余儀なくされることも多いです。

ボルボで言えば近年、フォルクスワーゲンのディーゼルゲートによって、プラグインハイブリッドとクリーンディーゼルという両刀使いがダメになり、今や電動化一本です。

しかしたった20年前は、「Multi-Fuel」という、様々なエネルギーをミックスして使用する研究も行われていました。今回は、過去から現在への、ボルボのパワーソースについて掘り起こしたいと思います。

一から作るボルボのエンジン

VOLVO OV4
ボルボ・カー・ジャパン

最初のボルボはオープントップのOV4と屋根のあるPV4。とても美しいボディですが、当初は人気がなく苦戦を強いられます。

最初のエンジンは28ps

これは有名な話ですが、「ボルボ」はスウェーデンのベアリングメーカーSFK社のガブリエルソンとラーソンによって作られました。エンジニアであるラーソンは自動車の製造をガブリエルソンから持ちかけられた時、すでにSFK社には在籍していませんでしたが、ガブリエルソンの”待ち伏せ”と情熱でボルボを設計するに至りました。

興味深いのは、最初のプロトタイプを製造した時点でエンジンは自社設計であることです。水冷直列4気筒、2リッターエンジンは28psを発揮。1927年に発表された「OV4」「PV4」に搭載されました。

この時、まだフォルクスワーゲンは存在せず、フォードはモデルTに終止符をうち、40hpを発揮するエンジンを搭載したモデルAを販売する頃の出来事でした。

100ps達成に30年

設立当初のボルボの設計理念は、「どのクルマにおいても通常の使用条件で最低2年のテストを行うこと、品質が良くて安く手に入るならスウェーデン製には拘らない。」という、徹底した品質へのこだわりでした。

それは信頼性と耐久性において高い評価を得ることができ、タクシーや警察車両へと導入されます。1932年には累計1万台を達成。ボルボは自動車会社として順調に歩みを進めます。

1959年、P1800に搭載された新型エンジン「B18B」は100psを達成。約30年で出力が4倍になります。そして、現代のボルボに受け継がれるデザインの源流は、この時にできたのでした。

エンジンの多様化が始まる

国が、世界が豊かになれば、自動車への要望も多くなります。1つの車種に複数のエンジンを用意することはどのメーカーでもしている事ですが、1982年に発表されたボルボ760も様々なエンジンを積んだ1台でした。

販売当初は150psのV6エンジンを搭載。翌年に登場する6気筒ディーゼルのTD24は109psを発揮します。しかしこれでは足らず、インタークラー付きターボエンジンB23ETはさらに高出力173ps!安全なファミリーカーと見せかけて意外と走るのは、今も昔も健在ですね。

直列5気筒 FF化に一気に進む

1991年、現代ボルボの原型ともいうべき、ボルボ850がデビュー。それまで「雪道にはFR」といっていたボルボが、いきなり「FFこそ雪道に良い」といってフルラインナップFF化にすすむ最初のクルマです。

そして、愛すべき「あいつ」が登場。そう、直列5気筒エンジン!!

規模の小さいボルボは、モジュラー設計で4気筒〜6気筒をカバーできるエンジンを開発。ポルシェが設計に関与したとされ、ボルボ=5気筒の構図もここで固められます。その後はターボやDOHCなどバリエーションを増やし、世界各国の規制に対応してボルボの屋台骨を支えるかに見えましたが、コスト高が影響してフォード傘下に入ることを余儀なくされました。

しかし、この5気筒エンジンでついに、300psの壁を突破。S60R/V70Rに搭載され、日本でも1050台が輸入。世界7000台の限定車が日本へ1050台輸入なんて、昔は日本もボルボのお得意様だったんですね。

VOLVO 850エステート
ボルボ・カー・ジャパン

主要コンポーネントはFRから変えず、その強い思想のおかげでサーブとの合併も見送られました。けれども850でいきなりFF化。180度違う施策をしてしまうのがボルボの強さです。

主軸にならなかった研究開発

Multi-Fuelを模索

さて、高出力化を目指してきたエンジン設計も、ガソリンの高騰や地球温暖化への影響を考えて燃費や排ガス性能も高めなくてはならなくなります。ボルボがとった手段は「Multi-Fuel」という、5つの燃料に対応したクルマの開発でした。

天然ガスに水素を混ぜた「ハイタン」、廃棄物から生成される「バイオメタン」、バイオエタノール+ガソリン15%の「バイオエタノールE85」、天然ガス、ガソリンです。1998年当時にして燃費基準EURO-5の適合も視野に入る優れたエンジン・マネジメント・システムを作成したボルボの底力を感じます。

このような車を作るのは、自国での販売よりは世界へ向けての販売をメインとして、さまざまな燃料需要に応えられるようにしなくてはならないボルボだからこそと言えるかもしれませんね。

フライホイールKERS

ところで、日本ではプリウスが1997年にデビュー。自動車に電動機を入れ、燃費が向上することが証明されました。まさかそんなことが実現するとは思っても見なかった欧州勢は、ハイブリッドでは日本に敵わないとクリーンディーゼルやダウンサイジングターボへ向かっていきます。

ボルボといえば。負けず嫌いの技術集団である彼らが挑んでいたのは「フライホイールKERS」。KERSとは運動エネルギー回生システムを指します。これにより最大20%の燃費向上は図られるとし、2011年には実証実験を始めました。

2013年には25%の燃費向上にまで性能をアップさせますが。。。とりあえずお蔵入り。販売はされずに終息します。

VOLVO V70 Multi-Fuel
出典:Volvo Car Group Global Media Newsroom

ボルボは次世代エネルギーを模索。5つのエネルギーに対応できるエンジンを開発しました。今は電動化に向かうボルボは、将来なにかエネルギー問題が起きたとしても安心です。

VOLVO KERS
出典:Volvo Car Group Global Media Newsroom

カーボンファイバーで作られるフライホイールKERS。後輪に取り付けられ、発進時にトランスミッションを通じてエネルギーを取り出されます。電動化に向かった今、過去のテクノロジーとなってしまうのでしょうか。

世界で戦えるDrive-E

真の存在意義は様々な要望に応えられる事

しばらくボルボの特徴となっていた直列5気筒エンジンですが、燃費の向上にマルチシリンダーは不向きです。2リッター以下、4気筒以下、ダウンサイジングターボの思想を取り入れて新開発したのが、新機軸エンジンDrive-Eですね。

直噴ターボのT5、1.5リッターバージョンのT3と矢継ぎに投入し、ディーゼルのD4が日本へ入ってきたのが2015年。結局このDrive-Eエンジンにより、ボルボの燃費は20%〜30%上昇。世界で戦える最新エンジンに登り詰めます。

Drive-Eは、プラグインハイブリッド、クリーンディーゼル、マイルドハイブリッドを組み込めるように当初から設計されていて、もし何かしらの技術が使えなくなったとしても問題無いよう、部品の共通化やモジュラー設計の思想が多く取り込まれています。クリーンディーゼルの積極販売は2017年のディーゼルゲートまでの3年間しかありませんでしたが、大きな損失を被る事なく今はプラグインハイブリッドを主軸に性能向上に取り組んでいます。

XC40 プラグインハイブリッドまでもう少し

ちなみにプラグインハイブリッドは、今のところ電動モーターでリアを駆動する「T6 TwinEngine」と「T8 TwinEngine」の2種類。そしてそろそろ日本へも入ってきそうなのが「T5 TwinEngine」。XC40へ搭載されるT5 TwinEngineは、電動モーターはフロントタイヤを駆動します。

とうとう、プリウスに追いつくことができるのですね!

最大出力 262hp 最大トルク425Nmは、もちろんXC40最強!かと思いきや、100km/hの到達速度はガソリンT5エンジンの6.5秒には敵わず、7.3秒。7速DCTと組み合わせて、あくまで燃費重視の姿勢は崩しません。それでも、400Nm越えのトルクは相当余裕を感じる事でしょう。

この気になるVOLVO XC40 T5 TwinEngineですが、スウェーデンではMomentumの設定があり、499,900スウェーデンクローナで販売開始の模様。日本円に換算すると、約550万円。ずいぶん安くなった気がします。日本への導入は今年度は無さそうですが、ハイブリッドカーとしても魅力的ですから、またまた注文殺到の予感ですね(^^)

VOLVO XC40 TwinEngine
出典:Volvo Car Group Global Media Newsroom

Momentumモデルも発表されているXC40 TwinEngine。550万円なら、買いたい人も多いかも。V60 TwinEngine Momentumとの価格差は100万円です。

ボルボはガラッと変えるのが得意?

いきなりのFF化や直列5気筒エンジン化を見ていると、ボルボは思い切った戦略変更を物ともせず行ってしまう強さがあります。「これだ!」と思えば、突き進んでしまうのは良い面もあれば悪い面もあります。

ひとつのエンジンで様々な需要に耐えられるように設計を変えた今、競争力は随分と向上したことでしょう。プラグインハイブリッドのほか、電気自動車も手がけるボルボに、今のところ死角なし!と言いたいところです。

あとは、どれだけ素早く供給できるか、です。妥当テスラで作ったポールスターも、納車まではされていません。すでにフォルクスワーゲンは電気自動車を販売し、2020年にはMINIも電気自動車を世に送り出します。ボルボも素早くボルボブランドで電気自動車を販売し、エンジン戦略で世界のトップへ進んで欲しいですね。

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