ボルボの戦略に黄色信号?EV施策の裏を読む

どこを見てもEVです。

2020年はやはり電気自動車普及元年になると思われ、日本だけでなく世界の自動車会社はバッテリーに貯めた電気だけで走行する「電気自動車」をラインナップに加えていきます。

流れとしては、「電気自動車」「プラグインハイブリッド」を基本に自動車は設計され、プラグインハイブリッドがあるからこそ「エンジン」が残る。将来はこういう構造になっていくのだと感じます。

この自動車産業の大きな曲がり角。ボルボの戦略はどのようなロードマップを描いているのでしょうか。

 

パワーシンボルを電動化に対応

見出し用 T2エンブレム

ボルボはといえば、早々にディーゼルを辞めて・・・とは言わず、もうしばらくは内燃機関のラインナップとして残すように進んでいますが、電動化への変革の第一歩は「命名方法」にあるようです。

electrive.comによれば、ボルボのエンジングレード命名方法は今後、ピュアEVは「P」、マイルドハイブリッドは「B」と命名されるとしています。ディーゼルの「D」は消えることが確定しています。

そしてガソリンの「T」ですが、これは「TwinEngine」の「T」へと変化していくようです。

ガソリンエンジンが残るのに「T」がTwinEngine専用になるのには訳があります。

ボルボは早くから電気自動車の開発に力を注いできました。2020年にはXC40 EVがデリバリーされていきます。このモデルは「P8」。今後ボルボを代表するEVモデル名へと登っていきます。

とはいっても、ディーゼルを放棄して電気自動車へ全力を注いだわりには、他のメーカーにアドバンテージを得られたわけではありませんでした。フォルクスワーゲンは「ID.3」で3パターンのバッテリー容量の違うモデルをラインナップするとしていますし、価格競争にもどうやら勝てないようです。

その証拠に、数年後にEVの価格を安くすると宣言し、ID.3の価格を公表しているフォルクスワーゲンに対し、ボルボはようやくXC40のプラグインハイブリッドの価格を公表したばかりです。

それでも電動化にまったをかけるわけにもいきません。そこでボルボは、すべての車種のエンジングレード命名を「P」「T」「B」へと変更し、電動化に遅れている印象を拭い去ろうとしているのです。

 

ナンバリングは出力ではなく容量に変えていく

見出し用 自動車の充電

もうひとつ、面白い情報がありました。

40及び60シリーズのマネージャー、Jonas Engstromは、Automotive News Europeに、XC40に電気自動車の別のバージョンが用意されていると述べています。

A P6 would therefore have a battery with 50 to 60 kWh – and according to Engstrom, there is also the possibility of assigning a two-digit model designation such as P10. “This is the start of a new nomenclature for describing the capacity of the electric vehicle’s battery,” Engstrom said, “I cannot provide any specifics about the future, but we are open to going above or below [P8].”

出典:electrive.com

P6には50〜60 kWhのバッテリーが搭載されます。また、Engstromによると、P10などの2桁のモデル指定を割り当てる可能性もあります。 「これは、電気自動車のバッテリーの容量を説明するための新しい命名法の始まりです」とEngstrom氏は語りました。「将来について具体的に説明することはできませんが、[P8]を上下することは可能です」

つまり、いままで出力を意味していたナンバリングは、バッテリー容量を示すものへ変える可能性がある、と言うのです。

場合によっては「P10」の発表もありえる。そこまで大きなバッテリー容量。これは何を意味するのでしょう?

 

2桁ナンバリングはあり得る話

見出し用 XC90

私まこまちは、これはXC90の電動化の際に命名されるものではないか、と考えています。SPA2プラットフォームへ移行するXC90は、現時点ではすでにマイルドハイブリッドが設定されてこそいるけれども、電動化に積極的な欧州では販売することができなくなる可能性があります。

ボルボ自身も現在の販売数を維持するために、BEV(完全にバッテリーだけで走る電気自動車)のラインナップを増やしていかなくてはなりません。P10、さらにはP12などを、ボルボの最大サイズSUV XC90へ搭載すること。これは遠い未来ではないのかもしれませんね。

さらにelective.comでは、TwinEngineのラインナップにも言及しています。

今後「T」は「TwinEngine」用の命名と述べましたが、このラインナップが増加し、価格を押し下げることを予想しています。2019年現在のプラグインハイブリッドラインナップは、「T8」「T6」それにXC40用「T5」です。ここに、「T4」も加わる予定だとしています。

 

苦難が始まる電動化への道

見出し用 工場

しかし、ボルボは無事に電動化への道を渡りきることはできるのでしょうか。

ここからはaboutVOLVOの独自考察です。

ボルボのラインナップ自身がSUV中心型へ移動したことで、CO2排出量は増加してしまいました。一応、欧州の排ガス規制は各メーカー毎に目標が決められており、ボルボはフォルクスワーゲンなどに比べれば達成目標は低く設定されています。

けれどもCO2を削減し続けること自体に変わりはなく、バッテリーの供給を受けながら生産数を維持しなくてはなりません。ディーゼルを残しているのは48Vマイルドハイブリッド化によってCO2の削減に貢献できるからではありますが、まわりの欧州車が効率のさらに良いディーゼルエンジンと48Vマイルドハイブリッドを設定していけば、開発を中断しているボルボディーゼルは勝ち目が無くなってきます。

実はボルボは、リストラを実施しています。2019年第二四半期発表資料3ページ目

工場での固定費削減の為だとは言いますが、生産数が伸びている現状での利益の圧迫、期を通しての利益創出の為の人員削減。ここから成長するのは、なかなか難しいと言えます。

実は結構危ないことになっている・・・人員削減からは、そんなメッセージを感じます。サーブがNEVSに変わり、名前が消えてしまったように、ボルボの名前が消えて吉利汽車のひとつにならないことを願います。

ひとつ、起死回生を狙える方法があります。噂さえも聞こえてこなくなりましたが、V40の後継車をEVメインにする方法です。XC90 SPA2バージョンが出るまでの2年間に、何らかの安価なEVを発売できるか。ここでボルボの命運は決まると言っていいでしょう。

なかなか新型車の情報を出さないボルボですが、何か秘策があるとすれば、EV小型車の販売でしょう。ピュアEVとして販売できれば、CO2排出量の問題はクリアできるはず。焦りは禁物。だが勝負は間近。販売台数の少ない自動車会社は、外的要因で直ぐに歪んでしまう。ボルボは正念場と言えるのかもしれません。

日本への影響も出ている

見出し用 XC40フロント

歪みの影響は、どうやら日本にも来ているようです。

2019年年末、今、V60が日本に入ってきていません。今年度の供給はストップされています。安定した供給を受けるはずのV60が、日本に無いとセールス氏は言います。

売るものが無ければ、一台あたりの単価を増やし、粗利を増やす他ない。売れ線のV60は入ってこない。XC40やXC60はオーダーしてから半年は待つ。危ない綱渡りが始まっているように感じます。

2019年10月、ボルボ・カー・ジャパンはひさびさに、新車の月間登録台数1,000台割れを経験しました。9月は1,800台、8月は1,300台を登録しているところを、905台。前年比73%です。(日本自動車輸入組合より)

タンカーの事故の影響はあるとは思いますが、たった221台。これを加えても前年を超えることができません。

ボルボは今、販売数を稼ごうとはしていない・・・aboutVOLVOへ寄せられたコメントを思い出します。

窮地に立たされた時、助けてくれるはずのユーザーを裏切ってばかりいたボルボ・カー・ジャパン。ボルボという看板を汚すことなく、スウェーデン本社とタッグを組んで、この大変な時期を乗り越えて欲しいと祈るばかりです。

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