消えたV40と全電動化ラインナップの光と影

シリーズ記事「ボルボの戦略を紐解く 」の第2弾です。このシリーズは毎日つづく連載企画ではありません。

少し前、ボルボに変わった出来事が起きた。

VOLVO GLOBAL NEWS ROOMよりボルボV40が消えた事だ。販売終息が日本法人によって宣言されていた事ではあったが、正直驚いた。もとは2020年モデルまで発表されていたからだ。

前倒しで販売終息になったV40。そして同時に宣言された「2019年ラインナップ全電動化達成」。この意味するところを深掘りしたい。

VOLVO V40 Inscription

8年周期の世代交代が叶わなかったV40だが、実力は十分だ。

出典:Volvo Car Group Global Media Newsroom

XC40 EVを発表しなければならなかった意味は、スウェーデンでの販売台数減少にある。

好調を維持するためのボルボの戦略

V40 MY2020は予定されていた

もともとV40は、2020年までは販売される予定であった。

ボルボの多くのモデルは8年周期で世代交代が行われる。ボルボV40の登場は2012年9月15日。欧州では7年、2013年春に登場した日本では実質6年半という異例の速さでの販売終息だ。フェイスリフトの変更を伴うリフレッシュは2016年に実施されており、あと4年間は販売する予定だったはずだ。

ボルボではSUVの販売が好調で、XC60が稼ぎ頭、XC40がバックオーダーを多く抱える構造。けれどもV40が足を引っ張るわけではなかった。

モデル2018年2017年伸び率
XC60189,459184,9662.4%
XC4075,82896
XC9094,18287,5187.6%
V40 / V40CC77,58795,370-18.6%
V60 / V60CC54,09551,9114.2%
S9057,14246,60222.6%
V90 / V90CC53,46150,5755.7%
S60 / S60CC40,49954,197-25.3%
その他342
合計642,253571,57712.4%

資料:Volvo Car Group – Interim report fourth quarter and full year 2018

V40の販売台数は2017年比で-18%。確かにこれは大きい。けれども64万台の中で7.7万台と、ボルボの中で12%の販売をしめるモデルなのだ。

このV40を販売終息してまで行いたかったものは、「XC40のバックオーダー解消」に他ならない。

XC40のバックオーダーの解消を図りたい

XC40はXC60とともに、半年待ちというバックオーダーを多く抱えている。納期の遅れは販売機会を逃してしまう可能性があった。すなわち、遅い納期に躊躇って契約を得られない、そもそもディーラーへ足を運ばない。人気のジャンルであるから、他社も力を入れている。

けれども、生産ラインを増やすことはできない。プラットフォームが違う為、V40の生産ラインでXC40は製造できない。ならば、V40の販売を打ち切ってしまおう。そう考えたのだろう。

EVブームに乗るために

見出し用写真 森林

XC40の生産ラインを増やしたかった理由はもうひとつある。XC40 EVの存在だ。

本来であれば、XC40 EV発表時にはバックオーダーを解消しておきたかった。EVの販売が確定すれば、XC40をオーダーした人がキャンセルを持ち込む可能性が出てくる。ボルボ本社が認めなくても、現地の販売法人が受け入れる可能性も出てくる。受け入れなかった場合は、これも顧客満足低下の引き金になるかもしれない。

2019年10月16日に、XC40 EVは発表された。これは上のような事が起こる事をある程度考慮に入れながらの発進になった可能性が高い。

今後も販売台数が確保できる、絶好調のXC40が、顧客不満足を引き起こす可能性がある。虎の子状態に陥ってしまう状態が、今なのだ。

 

だから、各現地法人へ通達し、V40はできるだけ在庫を確保しつつ、2019年に販売終息に舵を切ったのだ。

あとは各国現地法人が在庫をうまく販売してくれれば良い。むしろユーザーと生産との間で、クッションとして働いてもらうのは、販売会社としては当然。V40は在庫販売、XC40の製造数上昇。納期が早まれば販売会社の実績もあがる。ステークホルダーには計画はうまくいくように感じてもらえる事だろう。

ところが、どうやら実際は全てうまくは行かないようだ。

VOLVO XC40EV
出典:Volvo Car Group Global Media Newsroom

落ちるディーゼル 上がるEV。ボルボは急ぐ必要があった。

予期しなかった販売台数

足元で起きた予想外

2019年、2クオーターが終わった時に出されたボルボからのレポートには、少し不可解な部分があった。

V40の販売を早々に切り上げていたお膝元スウェーデンで、販売台数が急激に落ちたのだ。

販売台数トップ102019年6ヶ月2018年6ヶ月伸び率
中国67,74161,48010.2%
アメリカ50,12047,6225.2%
スウェーデン31,74243,102-26.4%
ドイツ26,14219,79932%
イギリス30,02623,16529.6%
ベルギー12,87211,15715.4%
フランス10,4289,29312.2%
イタリア10,8889,03920.5%
日本9,2688,4979.1%
オランダ9,8418,9639.8%

スウェーデンは2019年、自動車の販売台数が減少している。1月から9月で-12%の販売台数減だ。そしてボルボはといえば、-21.6%の台数減。そして痛いのが、シェアが20.1%から17.9%へと下がった事だ。

主な原因は、スウェーデンでは2018年に増税が実施されたことでの駆け込み需要の反動。そしてディーゼル車の販売台数が前年比で20%落ちた事だ。逆に電動車が20%シェアを伸ばしている。ここでEVを持っていなかったボルボは、販売台数が落ちるグループへ入ってしまった。

燃費の良いコンパクトのV40はもういない。XC40はバックオーダーが多く、販売台数が伸びない。XC40 EVを早々に出さなければ、スウェーデンでのシェア1位の確保は難しくなる。この構図、今後欧州、中国、他の国にも同じことが起きるのではないか?

欧州ではスウェーデン以外は、好調な販売を記録している。けれどもそれらは、V40があったからだ。XC40は増産を続けているが、V40のマーケットを瞬時にXC40やXC40 EVへ切り替えないと、スウェーデンと同じ状況に陥る可能性がある。これは本当に可能だろうか?

遅れた販売計画

見出し用写真 DRIVE-E

そもそも、ボルボV40の後継車が発表できない状況になったのが問題だった。

シリーズ記事「ボルボの戦略を紐解く」の第一弾で語った、ポールスター2の存在。来年このモデルを40シリーズのスモールへ展開する予定としていれば、このセグメントの好調さを維持できれば、スウェーデンでの落ち込みはここまで落ちなかった事だろう。

そして、XC20という小型SUV計画。ボルボは小規模なメーカーであるから、計画はしてもすぐには生産にたどり着けないことだろう。同じジャンルで出たフォルクスワーゲン T-Crossは、欧州では堅調な売れ行きを示していると言う。販売機会をロスしてしまったことは、V40後継者の白紙撤回のゴタゴタに遠からず影響を受けたと言えるだろう。

V40の後継車かXC20は、2019年に発表されるという予想が多かった。V40=ハッチバックは販売台数を落とし、今後はSUVが伸びると言う予想は、間違ってはいなかったようだが焦りすぎたようだ。

スモールがなければ販売は減るに決まっている

また、エントリーモデルの不在は当然、販売台数を落とす要因になる。購入層が上がるから、若年層が購入できないメーカーになってしまう。プレミアムカー=憧れの車だから良いのだ、という意見も出そうだが、V40やXC40は欧州ではプレミアムカーの価格帯ではない。

となれば、若い頃から買い続けてくれる層を自ら手放してしまっていることになる。

自動車を手にすると言うドリームは、自動車メーカーが培うべきだ。いつかは軽自動車、いつかはカローラ、いつかはクラウン。段階を追って購入できるラインナップを持ち続けること。自社のファンを養成するために、最低限必要なことだ。

スーパーカーメーカーは憧れを販売できるだろうが、ボルボはそこまで高額なラインナップではない。この「自動車への憧れを培う」行為を辞めてしまうメーカーが、今後どのように販路を拡大できようか。

後の祭りにならないように

見出し用写真 VOLVO V40

その巻き返しは、これからの2年にかかってくる。XC40 EVの発表時、電気自動車の生産ラインを3倍にするとうたったのは、欧州での電気自動車販売台数の増加に焦っているからだ。自社の電気自動車に乗って欲しい。納期も短くできますよ。そういうメッセージが込められている。

影響をうけて販売終息したV40。自分が生産ラインから消えたことで達成された「2019年全モデル電動化」。この言葉には全く意味がなく、V40の花向けにもならなかった。少なくとも、質実剛健を感じて購入している層へは悪いメッセージしか残らなかったことだろう。

けれども、期待するのはやはり、コンパクトの販売だ。痛手を被ったが、CMAプラットフォームの生産ラインが増える。早々にコンパクトカーを出すことが、そして出すぞという意思表示が、ボルボを救う道だろう。

どうやらボルボは、内部では相当混乱しているのかもしれない。吉利汽車の影響なのか、吉利汽車が介入しなかったらとっくに潰れていたのか。どのみち瀬戸際には変わらないようだ。

吉利汽車、ボルボ、ポールスター。先をしっかりと見据えた販売戦略が試されている。

 

参考文献

JATO 2019年6月欧州新車飯台台数速報

自動車産業ポータル MARKLINES 自動車販売台数速報 スウェーデン2019年

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