エンジンの終末と未来 ガソリンエンジンの熱効率は50%を目指す

エンジンの終末と未来のシリーズ記事。第一章は「ガソリンエンジンの熱効率」についてです。

ガソリンエンジンは世界で最も普及しているエンジンですが、カーボンフリーが叫ばれ、将来の立ち位置が不安視する声も多く聞かれます。

今回ガソリンエンジンで注目するのは、

  • 効率をどこまで上げられるか
  • 代替燃料へ変えられるか

の2つです。

楽しい自動車ライフを続けるために

XC40 コックピット

いまだガソリンエンジンのみのXC40だが、EVの発表が間近に迫る。ガソリンエンジンの楽しさはいつまで体験できるだろうか。

川崎市 湾岸線からの扇島

青空の下でドライブを楽しむなら 環境にもしっかり配慮された車を選ぶべきですね

自動車は楽しいものです。

所有する喜びや、運転する楽しみが無いのなら、自動車というものは魅力が半減してしまうでしょう。自動運転技術は人の命を守るという観点で言えば有効と言えますが、運転する楽しみが減るのは残念なところです。

いま、自動車の大転換期と言われている理由には、環境対応という大義名分のほかにもAIを活用した交通システムの再構築なども含まれています。エンジンの出力合戦、豪華さを競う時代は終わりを告げるかもしれません。

しかし、自動車の中には動力を供給する「パワーソース」は、動くためには必ず残ります。このエンジンをどれだけ効率の良いものに変えられるかという事が、今後の自動車開発の主軸になることでしょう。

そして私たちは、エンジンサウンドであるとか、フィーリングであるとか、燃費であるとか、様々な拘りのあるパワーソースの中から1つを選択するという「売買」を通じて自動車産業と環境問題に貢献していくことになります。

 

そしてなぜガソリンエンジンが主流であるのかと言えば、少ない騒音、なめらかな回転フィール、大気汚染物質の少なさが要因です。ディーゼルエンジンに比べて優位なこれらポイントは、今後も揺るがない事でしょう。

ならば劣っている「熱効率」をどのように上げて、「代替燃料」にどれほど対応して行くかが課題となります。

 

なぜカーボンフリーを目指しているの?
地球温暖化を防ぐためです。産業革命以降、地球上には1兆9000億トンを超える二酸化炭素が放出されたと言われています。平均気温は0.8度上昇し、このままでは2050年には地球の平均気温は2度上昇すると試算されています。気候変動や食料問題への影響の多い地球温暖化を防止するため、COP21では2100年には完全なCO2排出ゼロ(カーボンフリー)を目標にしています。

 

ガソリンエンジンの熱効率上昇技術

見出し用写真 DRIVE-E

バッテリーだけで車を動かす電気自動車も燃料電池車も、技術開発には時間がかかります。

また普及するにしても、後進国では価格の高い先進自動車は普及せず、ガソリンやディーゼルが今後も主流になるでしょう。CO2の排出量をできるだけ抑えるのなら、ガソリンエンジンの熱効率アップも考えなくてはなりません。

現在40%付近にあるガソリンエンジンの熱効率は、50%を目指して研究されています。今注目されているエンジンの技術を紹介します。

排熱発電(熱源発電)

熱電変換素子を使用し、エンジンの廃熱と冷却水との温度差で発電する仕組みです。2024年を目処に実用化されるとしており、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンの他、熱を発生するものの効率をあげられると期待されています。

熱から得られるものは電気ですので、ハイブリッドカーの充電やエアコン用電力に使えそうです。

温度差で発電を行うには、温度差があればあるほどいい。クルマの中で最も温度差があるのが、排気ガスと冷却水だ。排気ガスはアイドリング時で200~300度、全開時には700~800度といわれる。エンジンに近い触媒は1000度に到達するようなこともあるという。それに対し、冷却水は適正温度が70~90度。この温度差を利用するのだ。

出展:JAFメディアワークス

熱電変換装置は駆動装置ではないので、高い耐久性が期待できます。温度差さえあれば発電できますから大気温よりもかなり高温になるクルマ用エンジンにはうってつけですね。人とクルマのテクノロジー展にも出展されていて、近い将来すべての車に搭載されるかもしれません。

 

超リーンバーン

昔の三菱GDIエンジンの進化版。三菱GDIはNOxが多く発生したため、リーンバーンは不要な技術になるかと思われました。

エンジンには「理論空燃費」というものがあり、効率的な燃焼を生みだすには理論空燃費(空気:燃料が14.7:1 ストイキという)に近づけて空気と燃料を混ぜる必要があり、そのようにコントロールされています。

リーンバーンは燃料を少なくし、同じ一度の爆発でも燃料を減らす=燃費を良くするために考えられたものです。GDIエンジンは燃料1に対して空気を20ほどのリーンバーンでしたが、最新のものは空気が35〜40とされ、この空燃費であればNOxが発生しにくいことがわかりました。

このスーパーリーンバーンは2019年中に販売開始される「マツダSKYACTIVE-X」に搭載される、最新の燃料効率アップ技術です。

マツダ

SPCCI(火花点火制御圧縮着火)

ですが、空燃費35〜40にすると、スパークプラグではガソリンに火がつかないという問題が発生します。

克服するには、ガソリンエンジンにディーゼルエンジンの「圧縮点火」という考え方が必要と考えられていました。スパークプラグで点火できない領域は、圧縮点火でいいじゃないか。

しかし、その切り替えが難しいと言われてきたのがHCCIエンジンでした。

マツダはSKYACTIVE-Xでこの難問を克服。全領域でスパークプラグによる点火を実現しています。

環境性能では燃費が現行ガソリンエンジンに比べて最大20〜30%程度向上。トルク※1を全域10%以上最大30%向上します。簡単に言うと、2.0Lガソリンエンジンのスポーツカー(ロードスター)並の走行性能を、1.5 Lディーゼルエンジンのコンパクトカー(デミオ)と同等のCO2排出量で実現できる、ということです。

出展:マツダ

 

超断熱技術

熱くなるエンジンを断熱するなんて、なんて思うかもしれませんが、断熱の必要性はエンジンをつくる素材と関係しています。

現代のエンジンは鉄やアルミニウム合金などを使っていますが、エンジン内部の燃焼はこれらのエンジンの素材の融点温度を平気で超えます。それでもエンジンが溶けないのは、冷却系といわれるエンジンの温度を大気に逃す仕組みが入っているからです。

しかし、エンジンは自身を冷やす仕組みを動かすために、約20%のエネルギーロスを起こしていると言われています。

エンジンをセラミックなどの高温に耐えられるもので製作することができれば、エンジン自体が溶けることを想定する必要がなくなります。さらにエンジンの外に出ようとする熱を”断熱”することができれば、冷却に使うエネルギーも不要となります。

 

なぜマツダは「エンジン」にこだわるの?
各自動車メーカーに言えることですが、ガソリンエンジンは直ぐには廃れないと考えられます。自動車は世界で販売され、電気自動車が優位な国もあれば、ガソリンでなければ運用できない国もあります。自動車メーカーは、できるだけすべての需要に応えられるようにしていなければなりません。マツダはガソリンの他、バイオディーゼルなどの研究にも参加し、内燃機関の未来を担っています。
トヨタは「エンジン」にはこだわらない?

マツダのエンジンに対する技術力が上がっている背景には、トヨタがいるからと読むこともできます。マツダのような小さい会社において、先進技術であるハイブリッドカーを作るのは容易ではありません。しかし親会社であるトヨタがいれば、内燃機関に集中して開発力を注ぐことができます。トヨタにしても、ハイブリッドカーには熱効率の良いガソリンエンジンも必要です。ハイブリッドモジュールでマツダを支援しつつ、内燃機関でマツダの力を借りることは、企業としてはウインウインを達成することになるのです。

 

研究段階では熱効率50%を超えている

大学や研究機関などで、熱効率50%を超えるガソリンエンジンはすでに、生み出されています。

もちろん採算をとれる価格にまで落とすには、時間がかかるにのは間違いありません。けれどもガソリンエンジン自体の効率があがる希望をつなぐことは必要です。

ガソリン燃焼とディーゼル燃焼
出典:JST

本プロジェクトでは、ガソリンエンジンについては、超希薄燃焼(スーパーリーンバーン)注2)、ディーゼルエンジンについては、高速空間燃焼の実現に成功しました。さらに両エンジンに共通する損失低減のための研究開発によって、機械摩擦損失の低減技術、ターボ過給システムの効率向上技術、および熱電変換システムの効率向上技術を開発しました。これらの技術を統合した結果、ガソリンエンジンでは51.5%、ディーゼルエンジンでは50.1%の正味最高熱効率を得ることができました。

出展:科学技術振興機構(JST)

熱効率50%を超えるガソリンエンジンの将来は、もちろんハイブリッド車でしょう。

電動モーターとバッテリー効率のアップでハイブリッドカーの燃費はあがりますが、同時にガソリンエンジン自体での燃費向上も必要です。

相乗効果により、いまのハイブリッドカーを大幅に超える燃費を兼ねてくれる可能性は十分にあるでしょう。

 

熱効率は70や80にはならないの?
いまの技術では難しく、達成に向けての技術も確立していません。たとえばガソリンエンジンに比べれば大きな効率を生むことができるはずの火力発電所でさえ、ようやく60%が見えてきたところです。ガソリンエンジンの熱効率50%超えは、火力発電所から電力が送られてくる時に消費する”送電ロス”は3%〜5%と言われていますから、もしもガソリンエンジンの熱効率を火力発電所なみに上げることができ、カーボンフリーやカーボンニュートラルな代替燃料ができれば、充電にたよるEVを脅かす存在になることでしょう。

 

カーボンフリーにはならないガソリンエンジン

けれども、ガソリンというエネルギーは、カーボンフリーにはなり得ません。脱石油にもなりません。

環境対応エンジンで必要なのは、CO2をどれだけ出さないか、というところにつきます。それではガソリンエンジンには全く未来は無いのでしょうか?

以前、ボルボでもMulti Fuel対応エンジンのプロトタイプが作成されていました。エンジンの効率をあげるのとともに、代替燃料を研究する企業にも努力が望まれます。

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次回は「ガソリンエンジン用の代替燃料」について調べて、まとめたいと思います。

お読みいただき、ありがとうございました。

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