ディーゼル復権へ 新技術と各社の思惑 その時ボルボは?

やはり、ディーゼル開発は停滞していませんでした。

ボルボカージャパン 木村社長がディーゼルのリセールが下がるとコメントしている間に、ディーゼルの復権に真面目に取り組み、商売というメーカーや国、消費者の架け橋をないがしろにしないドイツ勢が水面下で動いていました。

BMX 3シリーズのディーゼル導入。メルセデスベンツのAクラスディーゼル導入。

両社、2020年欧州排ガス規制に合わせ、CO2排出量削減につながる最新クリーンディーゼルを発表。販売を推進せずに放って置かれたボルボディーゼルの優位性は失われることとなりました。

欧州排ガス規制対応の新ディーゼル 発進

BMW 3シリーズ
出典:BMW JAPAN

2019年6月に日本に導入されるBMWやメルセデスベンツのディーゼルモデル。CO2排出量は以下の通り。

モデル CO2排出量(g/km)
Mercedes A200d 110
VOLVO V40 D3(日本未導入) 118 – 128
BMW 320d xDrive SE 118 – 120
VOLVO V60 D4(日本未導入) 135
VOLVO V60 T6 TwinEngine 44

BMWのCO2排出量は、英国BMWホームページを参照しています。

MercedesのCO2排出量は、英国Mercedesホームページを参照しています。(英語圏で翻訳が楽だからです。)

ボルボのCO2排出量は、VOLVO GLOBAL News Roomを参照しています。

数値は慎重に内容を確認し、WTLCモードでの数値と明記のあるものを使用していますが、走行モードによる数値の差は各車表示が異なる為、数値に幅をもたせています。

CO2排出量は、車両の軽量化も関係します。エンジンやボディの軽量化により、ボルボの同じクラスに比べ、約5%〜10%のCO2削減を成功させています。

ディーゼルゲートのあった欧州での、逆光とも言える新型ディーゼルエンジンの開発。この意図と各社の思惑を考察します。

ディーゼルを落とすのも上げるのも欧州勢

メルセデスベンツA200D
出典:メルセデスベンツAクラス

そもそも、ディーゼルエンジンを持ち上げたのは欧州勢です。

熱効率の良いディーゼルエンジンは、企業が社員にクルマを買い与える欧州では最良で、燃費が良くCO2削減にも役立つと、一時期は50パーセントを超える販売率を誇っていました。

そしてフォルクスワーゲングループによるディーゼル不正により、ディーゼルエンジンはクリーンではないと消費者は考えたわけです。

きたる欧州2020年排ガス規制には、CO2削減に大いに役立つディーゼルは最適解のはずでした。しかしそれは、ディーゼルゲートにより叶わない幻想へと変わります。なぜなら、欧州排ガス規制は「販売したクルマの総排出量÷販売した台数」がベースとなるからです。どんなにCO2削減に役立つとしても、ディーゼルの販売が振るわなければ意味がありません。

ディーゼルエンジンの排気ガスにはPMやNOxという微粒子が入っており、発がん性があるとWHOに指定されています。CO2排出量が少なくなっても根本にある発がん性物質をなんとかしないと、ディーゼルエンジンの将来はありません。

ところが、そのディーゼルエンジンには未来があると言い切り、技術開発に成功した会社があります。不正したフォルクスワーゲンと同じ、ドイツに本社を置くボッシュ社でした。

ディーゼルに光 NOx排出量を10分の1に

ボッシュ社
出典:BOSH

発がん性物質をなんとかすれば、ディーゼルエンジンには未来がありました。バイオディーゼルによる脱石油、高効率による、発電所集中型よりも環境負荷の低い効率の確立。不正は不正ではありましたが、本来であればガソリンエンジンを押しのける実力があるのです。

ドイツボッシュ社はディーゼル排気ガス循環メカニズム解析とエンジンマネジメント最適化により、NOx排出量は従来の10分の1に。(NOx排出量も欧州排ガス規制で制限されています。)しかも二酸化炭素発生量も増える事もないと言います。

メーカーの要望があれば直ぐにでも生産を開始できるといいますから、各メーカーは黙っていられません、

ディーゼルはなぜ悪者扱いなのか

volvo-engine-4cylinder
ボルボの素晴らしいDrive-Eエンジン

ディーゼルエンジンは、気筒内の圧縮空気に燃料を噴射することによって発生する燃焼(爆発)によりエネルギーを得ています。空気は基本的に自然吸入に頼りますが、ターボチャージャーやインタークーラーにより空気流入量を増やすことにより燃やせる燃料を増やし、大きな出力を得られるようになっています。

空気を多く流入する=酸素が多い、ということで、少量の燃料でも多くの熱を得ることができ、熱膨張の力が大きくなります。しかし窒素も多く流入し反応するので、窒素化合物(NOx)の量も多くなります。ディーゼルエンジンで高出力を得ようとすると、どうしてもNOxは増えてしまうのです。

他方、PM(微粒子)は燃料の燃えかすから発生します。NOxを排出しないようにする為には、高温状態にならないように制御する必要があります。空気の吸入量を抑制すれば、NOxは抑制されますが、今度は空気が少ないことにより燃料が燃え切らず、PMの発生が多くなります。

NOxとPMはこのようにトレードオフの関係と言われています。

しかしNOxを少なくするという事、つまり空気の流入を抑えるというと、出力を制限することになります。幸いPMはコモンレールなどの燃料噴射装置の改善により、発生を抑えることに成功しました。残りはNOx。ひとまずは浄化装置でNOxをキャッチしてしまおう、というのが現在の主流だったわけです。(PMもDPF装置でキャッチしています。)

そのほか、EGR(排気熱循環)装置などによりエンジンの温度の均一化など、NOxが削減されるように対策されていましたが、限界が見えてきます。NOx浄化装置は低温では反応が悪く、エンジンが冷却状態から試験されるWTLCモードでは大変不利な状況でした。

行き詰まる自動車メーカー。それでもモデルチェンジのたびに性能アップをアピールしなくてはならない。ここでフォルクスワーゲン社による排ガス不正が起きてしまうのです。

ボッシュ社の新テクノロジーで開けるディーゼルの未来

ところが2018年4月、ボッシュ社は新しいターボチャージャーによってエンジン内の空気循環システムを改善し、NOx発生の原因である排気ガスの低温状態を極力排除することに成功します。

NOx浄化率を最適化するためには、排出ガスの温度が200℃を上回る必要があるのですが、市街地を走行する時はこの温度に達しないこともよくあります。そこでボッシュは、ディーゼルエンジン用の高度なサーマルマネジメントシステムを採用することにしました。このシステムは排出ガスの温度を積極的に制御し、エグゾーストシステムが確実に機能する安定した温度域内に保たれるため、排出ガスが低いレベルに抑えられるようになりました。

出典:ボッシュ

ボッシュ社はドライバーの運転にあわせ、EGRの動作の高レスポンス化を実現。排気ガスの温度を細かく制御することができるようなった事で、NOxの浄化装置を正しく動作させられる温度コントロールも可能になりました。

結果として、NOx発生量を10分の1に抑えられる。NOxが減るのであれば、さらなる高出力化も期待できる。ならばさらなるダウンサイジング・・・・ディーゼルエンジンの将来が明るくなってきたのです。

各自動車メーカーの思惑

日本とスウェーデンの国旗

ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、電気自動車。脱石油が叶うのはディーゼルエンジンと電気自動車です。大きな流れで見れば、電気自動車に集約されることは否めません。それは自動車創世記には電気自動車があったことを見れば、エンジンに比べて比較的構造が簡単な電気モーターを使用する電気自動車がコスト的にも優れたものになるからです。

一方で、バッテリーやモーターの作成技術はまだまだ先があります。コストも高く、充電問題も完全には片付いていません。自動車開発の過渡期である今は、この3つのクルマを混合して使用するのが望ましいのです。

では有名メーカー各社は、今後どのような展望を持っているのでしょうか。

欧州勢はディーゼルで再発進

フォルクスワーゲンゴルフ
出典:フォルクスワーゲンジャパン

欧州勢は間違いなく、ディーゼルエンジンの改善に取り組む事でしょう。

ボッシュ社の取引先には、ドイツ勢が多く含まれます。ボッシュ社自体、フォルクスワーゲン社の不正に加担したとして罰金を言い渡されています。(勝手に不正されただけなのですが、罰金は支払うようです。)

欧州ではディーゼルエンジンの開発が先行されていた為、電気自動車やハイブリッド技術は日本の自動車メーカーには敵いません。であるならば、CO2削減に即効力のあるディーゼルエンジンの長寿命化を望む事でしょう。

ボッシュ社のNOx低減技術によるクリーンエンジン化、そして高出力化の実現はさらなるエンジンの小型化が期待でき、低燃費エンジンに期待が高まります。メルセデスやBMWの新エンジンに見られるように、徐々にCO2排出量を下げていく事でしょう。

その間に電動化への道筋を立てる。まあ、ディーゼルエンジンに頼らなければ、欧州排ガス規制には対応できないのが実情ですが。

日本勢は電気自動車寄り

トヨタプリウスのフロントマスク
出典:トヨタ自動車

トヨタグループや日産勢は、電気自動車方面へ進む事でしょう。

日産はすでにリーフを世の中に出し、電気自動車では一歩リードしています。原子力発電を推進しているフランスも付いています。フランスとルノーは原発+電気自動車でエコロジーを主張できます。

トヨタはスバルと組み、電気自動車のAWDSUVを開発するようです。将来は電気だろうと考えているのでしょう。日本の国土だけを見れば、長距離ドライブだとしても1日あたり概ね400kmも走れればよく、充電設備さえ増やしてしまえばなんとかなります。

一方世界を相手にする場合は、まだまだ電気自動車だけでは難しい。特にトヨタは、ボッシュではなくデンソーやアイシン精機などに同じような技術の開発を急がせ、将来はディーゼル復帰も視野にいれているかもしれませんね。

また、資本提携しているマツダの「スカイアクティブ」という武器も持っています。中国の吉利汽車がボルボに自由に仕事をさせ、ボルボが飛躍したのと同様トヨタもマツダに自由に仕事をしてもらい、マツダ独自の技術開発を推進し、そのフィードバックを待っているのかもしれません。

単独企業で歯がゆいボルボ

Volvo V60 CrossCountry フロントデザイン
ディーゼルの導入が見送られたボルボV60CrossCountry

ボルボはどちらでしょう?

ボルボは電動化を目指してはいますが、広いスウェーデンを考えると電気だけでは走りきれません。ですので、プラグインハイブリッドを量産化する計画を持っているわけです。

(注意:メルカトル図法で見ると大きいスウェーデンですが、日本の1.2倍ほどの国土。ただし人口が少ないので隣の家までが遠いです。うらやましー)

中国は大気汚染が深刻で、電気自動車の普及を急いでいます。そうなれば電気を優先に考えることは一般的です。大きな販路があるからこそ、電気自動車に集中できると言えます。

しかし、ボルボは迷っています。その最もたるのがディーゼルマイルドハイブリッド。確かに今あるエンジンの中では最良の組み合わせかもしれません。しかし足を抜こうにも抜けないディーゼルエンジン。一体世の中はガソリンなのか、ディーゼルなのか、それとも電気自動車なのか。

いえ、訂正します。ボルボはわかっている。いきなり電気自動車一本で行こうにも、インフラも性能も足りません。世界各国から色々な要望が来る。世界を相手にするのであれば、世界どこででも走れるクルマを作らなくてはなりません。

そうでなければ、わざわざ純電気自動車をポールスターブランドで販売などしません。片方では電気自動車専業を目指し、片方では堅実な商売をしていくという意思表示です。

ボルボの痛いところは、吉利汽車グループでの技術的指導者の立場であることです。トヨターマツダのように別の方面のパワーソースを作れる会社を、ボルボはパートナーとして持ってはいません。(メルセデスベンツとは吉利汽車を介して関係性はありますが。。。)エンジン開発において、冒険することができない。エンジンのブラッシュアップも優先順位を決めてしっかり進まなければ、せっかく開発したDrive-Eコンポーネンツは宝の持ち腐れになってしまいます。

その中で最初に出すマイルドハイブリッドが、ディーゼルエンジンとの組み合わせです。

ボルボは別に、ディーゼルを捨てようとは考えてはいないのではないでしょうか? だとすれば、なぜ日本ではディーゼルを販売しないのでしょうか。

エンジンは程よいバランスで持ち続ける事が大事だ

無印良品キャンプ場

沢山の安全装備、きっちりと作られた骨格により、じつは同じクラスでは重い部類に入るボルボ各車。

Drive-Eの高効率エンジンをもってしても、メルセデスやBMW、トヨタには燃費で叶わなくなりつつあります。Drive-Eは華々しくデビューしましたが、ディーゼルゲート以降は目立ったブラッシュアップはありません。

エンジンの開発は大変なことでしょう。しかし手を緩めれば、それこそ商品力の低下は免れません。ここは各国の販社がしっかりとサポートし、たくさんのボルボを販売する必要があります。

日本は軽油を輸出しています。クリーンなディーゼルは日本の自動車業界でのCO2排出総量を落としてくれることでしょう。発がん性物質をしっかり取り除いた、魅力あるディーゼルエンジンであるならば、ガソリンエンジンよりも将来があることは明白です。

脱石油によるガソリンエンジンの終焉、電気自動車の普及。その間をつなぐディーゼルエンジン。新技術によりパワーソース計画が塗り替えられる日も近いかもしれませんね。

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